パスタ にはやっぱり トマトソース 今日は一日だらだらと家で過ごそうと決めていたのに。 だいたい今日の晩ご飯をパスタにするつもりなら、その主役であるパスタがあるか確認しないのか! なくてはならない主役を買い忘れるなんて・・・!パスタがあるからトマトソースがおいしいんだろ?! 5時からのテレビが見たいのにといえば、じゃ、ご飯要らないんだね?って、いるにきまっとろうが!!・・・だが、 そんな事言えるわけも無くすごすごと渡された千円を持ってスーパーへと向かったのだ。 右手には今日のご飯の主役であるパスタが入った白いビニール袋が握られている。 ふー。と思わずため息が出る。 わん!わん!わん! 俯いていた顔を上げて犬の鳴き声が聞こえた前を見る。と、柴犬っぽい犬が子供たちに向かって吠えている。 それを飼い主の人がリードを引っ張って抑えているところだった。なんだか見覚えある後姿だな・・・ って・・・宍戸!?通りでなんだか見たことある後姿だと思ったわけだ。 宍戸は前を向いていて私には気づいていない。よしっ!とジーンズのポケットに入っているケータイを取り出し、すばやくボタンを押す。 多分今の私の顔は岳人が悪戯する時に浮かべているあのニヤニヤ顔をしている事だろう。 カチカチカチカチカチ・・・・ To:宍戸 Sub:(non title) 本文: その子が噂のラッキー君かい? あらら?今日はいつもの帽子は? 1分も掛からないうちにメールは宍戸の元に届いたようでジーンズからケータイを取り出すのが見える。 後姿なのでどういう表情をしているかまでは分からないけれど、多分驚いてるだろう。読み終わったのかあちこちをキョロキョロしながら見回し始めた。 ラッキーも飼い主である宍戸と同じようにキョロキョロし始めたので思わず吹き出しそうになるが、それを我慢して電柱の影に急いで隠れる。ここでばれては面白くないのでジッと動かずに我慢する。 おそらく宍戸は今私にメールを送ろうとしているだろう。 ♪〜、 音が鳴ったと同時に手に持っていたケータイのボタンを押す。 from:宍戸 Sub:Re: 本文: お前どこから見てんだよ! 口角があがってしまうが、これはしょうがない。楽しいので! こんな所をもし岳人にでも見られたらあいつは自分の事を棚に上げて「ほんとお前って子供だな!」って言うんだろう。 この前、慈朗と消しゴムのカスのぶつけ合いをしていたら、どこからとも無く現れて「ほんとお前らって子供だな」発言をしていったくせに、その数分後には机に向かって必死で消しゴムをかけて消しカスを作っていた。 お前人のこと言えねえだろ!!ってその時言ってやればよかったのに、あまりに白熱しすぎてそんな事頭に浮かばなかった。まったく惜しいことをした! カチカチカチカチ・・・・ From:宍戸 Sub:(non title) 本文: 上!! メールを送ってから出来るだけ電柱の影から出ないようにしながら様子を伺う。 「上!」なんて送ったが上にもちろん私はいない、あるのはオレンジに染まり始めた空と雲だけだ。(時々カラスも通るけど)だけど馬鹿正直な宍戸の事だきっと上を見て探してくれるだろうと言う期待を込めて視線を向ける。 案の定、宍戸は上を見ている。この隙にと、私は電柱の陰から飛び出し出来るだけ音をたてずに、かつ!すばやく宍戸に近づく。ラッキーがこちらに気づき目が合うが、吠える気はないらしく黙って私が近づくのを見ている。 あと5歩・・・ 4歩・・・ 3歩・・・ 2歩・・・ 「何もねえじゃねえか・・・」 1歩!! 「わあ!!」 「のあっ!」 ※ 「のあっ!って!アハハハハハハハハハ」 「・・・。」 「そっそれも、ブフッ!飛び上がってたし!アハハハ、どんだけびびってんの!」 「うるせえ!!」 「てか、アハハ、上にいるわけないじゃん!普通に考えて分かるでしょ!」 「・・・。」 「アハハハハハハ!!」 「・・・チッ!そ、それよりお前なんでこんなとこにいんの。」 「ハァハァ、ふー。おいおい、宍戸さん何わざとらしく話題変えようとしてんの」 「(何、笑い疲れてんだよ!)なっ!別にそんなんじゃね」 「まぁいいや、おつかい」 「(人の話をさえぎるな!)ふぅん」 右手に持った白い袋をひょいと持ち上げながら言ったら、宍戸は大して興味がないようでチラリと視線を私の右手に向けただけだった。 何を買ったかは聞かないのか。と思っているとしっぽを振りながら、うれしそうにラッキーが近づいてきた。 鼻をクンクンさせながらも目線は、私が持っている袋にある。中身が気になるようだ。目当てが私ではなく袋の中身と言うのが少し癪に障るが、 しゃがんで頭を撫でてあげると、うれしそうにさっきよりも激しくフリフリしっぽを振りはじめた。 「おぉ、憂いやつじゃ。憂いやつじゃ」 「・・・・。」 ラッキーを触っているとうちで飼っているマロン(ダックスフント・5歳・オス)を思い出し、無性にマロンを抱きしめたくなってきた。 なでなでしたい、抱っこしたい、抱きしめたい、チューしたい、匂いを嗅ぎたい。と思いながらラッキーを触っていると私の欲望に気付いたのか2,3歩後ろに下がってから何かを訴えるかのように宍戸を見つめ始めた。 「ラッキーどうした?こいつの異常さを察知したのか。」 「異常さってなんじゃ!私はいたって普通ですよ!」 「じゃあ何で今瞬きせずに、ラッキーを見てたんだ?何で歯を食いしばってたんだ?何で手が震えてたんだ?」 「それはね、愛犬マロンを思い出して触りたくなって禁断症状が出たんだよ」 「何がそれはね、だよ!やっぱり異常じゃねぇか!」 「まぁ、たしかに異常な程マロンの事愛してるからね!!」 「・・・。」 「かわいすぎるのが私はダメなんだと思うんですよ、あのかわいさは罪だな。宍戸はどう思う?」 「知らねぇよ・・・」 宍戸は引いたような顔をして突っ立ったまんまだ。このまま道の真ん中を占領しているわけにもいかないので歩き始めると、宍戸も隣を歩き始めた。 昼間は少し暑くなってきていたのに、やはりまだ夜に近づいてくると風が冷たくなって肌寒い。ひゅーと風が吹いて髪が舞い上がった。 さっきまでクリアだった視界が髪の毛でふさがれる。邪魔だな、と思いながらぼさぼさになった髪を直していると宍戸がこっちを見ていた。 「なに?」 「えっ?!いや別に・・・」 別に。といったわりに、目に見て明らかなほど宍戸は焦っているように見える。あっちこっちに目玉を動かして私と目を合わせない様にしているのが丸分かりだ。 全然、別に。じゃなさそうだ。 「……」 「……」 「そっ、そういえばよっ!」 「ん?」 「……」 「…?」 「……」 「(何なんだこの沈黙は)」 「お前昨日告られたらしいな!」 「えっ!?…うん」 「あっ!別に俺が盗み聞きしてたわけじゃねぇからな!忍足が見たって言ってたんだよ」 別に聞いてもないのに、忍足から聞いたと言う事まで教えてくれた。そうかそうか、忍足か…。いらんこと言いやがって。あの丸めがねめ! よりによって宍戸に教えるとは…!!どうしてくれよう…!!どうやって忍足を制裁してやろうか頭の中でシミレーションしてみる。 「それで、どうしたんだ?」おずおずしながら宍戸が聞きに来た、ので脳内で行っていた忍足への制裁をストップする。 「それで?」 「だから、つ、付き合う事に、したのかって事だよ。」 「………。」 「(ごくり)」 「…あれ?今日はテニス部は?」 「…おっまえ!今は俺が質問してるんだろ!休みだよ!」 「何だよ、カリカリすんなって。このパスタ食べるか?お腹壊すかもしれないけど」 「食べねぇよ!!で?」 「(いきなり強気になりやがって)…断ったよ。」 「へ、へー。断ったのか」 「何でそんな事聞くの…。」 「な、何で?!」 本当に何故そんな事を宍戸が聞くのか気になったので聞いてみたのだが、また挙動不審に目玉を動かし始めた。 ジッと宍戸の顔を見ていると、どんどん顔が赤くなってきた様に見える。そんなもんお構いなしに見ているとなんだか私の顔も熱を持ち始めた気がする。 だが、それでも見つめ続けると宍戸と目が合った。と同時に今度は顔だけではなく、全身の体温が上がった。急いで視線をはずす。 少し不自然だったかもしれない。 「のこと何とも思ってなかったら、こんなこと聞かねぇからな…。」 それだけを言うと夕日に向かって宍戸は走っていった。夕日に向かって走っていくというのが宍戸に合いすぎていて笑ってしまった。 おつかいに出されたときの少しの腹立たしさや、忍足に対しての怒りは収まっていた。むしろ心がウキウキしている。 さっきまで肌寒いと感じた風は、火照った体にはちょうどいいぐらいに感じられた。 (20080504) |