なんだかいらいらする




「うまーい!!」
「あ」
いきなり立ち上がって、叫びだしたの声にびっくりしてしまって。食べていたアイスを落としてしまった。 水色をしたソーダ味のアイスは溶けてきていたので、少しの振動にも耐えられなかったらしい。 地面にどんどん吸い取られてしまった。

「もう〜がいきなり大きい声出すから、アイス落ちた!!」
「ご、ごめん」
「…ちっ!」
「(し、舌打ち!!)」
「……」
「帰りに弁償します…。それで勘弁してください」
「いや、それ頂戴」

が右手に持っているジャイアントコーンに向けて手を出す。
暑いので、バニラやチョコレート味は食べたいと思わないんだけれど、少しづつ大切そうに食べるの姿を 見ていると意地悪してやりたくなった。

「えぇ?!こ、これを渡せと?!」
「そうだよ」
「そんな…!!」
「早く」
「う〜…ひどい!ひどすぎる!」
「……」

ものすごく、しぶしぶと右手を差し出してきた。それを受け取った俺は、わざとに見せ付けるようにアイ スを舐める。恨みがましそうに見てくるを見て笑みが浮かぶ。口の中に甘すぎる程の甘さが広がる。

「うぇ…これ、ものすごい甘い」
「!!何だよそんなこと言うなら返して!!」
「いーやー」
「おいしくないんでしょ!!だったら返してよ」
「おいしくないけど我慢して食べる」
「何じゃそりゃ!そんな無理してまで食べなくていい!」
「ううん。無理して食べるよ」
「ジロー考えてみろ!そのアイスを本当に必要としてる人間がいるって事を…!」

なんかまだ隣でごちゃごちゃ言ってるのが聞こえるけれど、無視してアイスを口へと運びながら何も聞こえな いふりをして空を見上げる。「聞こえてるくせに無視すんな!!」…いい天気だなぁ〜。 隣でぶつぶつ言ってる声が聞こえなくなったので首を動かして見てみる。

「なにしてんの?」
「ジローにアイス奪われて暇だから、アリをエサまで導いてあげてるの」
「ふうん。」

オレがさっきアイスを落とした所に、木の枝でアリを追いやっているようだ。 ただ濡れているだけに見えるので、それがアイスだったとはオレとにしか分からないだろう。 最後の一口を口に放り込む。はアイスのことは諦めがついたのか、こっちを見ていない。少し肩透かしを くらったような気分になりながら立ち上がる。

「どこ行くの?」
「手洗ってくるー」
「いってらっしゃーい」

こっちを見もせずに手だけをヒラヒラさせたに少しムッとするが、文句を言う権利なんかオレにはない。
――そうだあいつにだってない、二人は付き合ってるわけではないのだ――
アリなんか見ててもおもしろくないのに。
冷たい水で洗うと、気分が少し良くなった。急いで戻ろうと、足を速める。
なんでここにいるんだ。
…走っていた足が徐々に力が入らなくなる、立ち止まろうと思ったわけではないのに足が動かなくなった。

そんなにうれしそうな顔するな。話してるだけなのに顔真っ赤にしてたら好きだって いってるようなもんじゃないか。
忍足も他の女の子にはそんな笑顔見せないくせに。




太陽の影



あぁいらいらする




(20080531)