「ダビデ見てごらん、空が青いね」 「うぃ」 空は青いし、天気も晴れてぽかぽかしていて気持ちいい。海も静かに波がいったりきたりしていて、砂が擦れる音が耳に 心地いい。風もふわりと優しく頬を撫でていったりして……世界はこんなに幸せそうなのに! 私とダビデだけ、この幸せな雰囲気に取り残されてしまったようだ。 get the wrong idea! 「ブルーな気持ちでスカイブルーを見上げる」 「……」 「……プッ」 「……」 こんなときでもダジャレは忘れないのか。呆れよりも不本意だけど感心してしまった。見ると独り満足そうにウンウン 頷いている。バネならここで跳び蹴りでも一発かましてつっこんであげるのだろうけれど、私は今、生憎とダビデが言った 通りブルーな気持ちなので、つっこんであげる気分ではない。が、私とダビデは失恋と言う心に痛手を受けた仲間同士なの でお世辞くらいは言ってやる事にする。「ハハハ、オモシロー」「…棒読み。」なんだか悲しそうな顔になったような気 もするが見なかった事にして放っておく。気を取り直して鞄の中から朝入れたじゃがりこを取り出す、まさかダビデと 二人で食べる事になるとはこれを入れた時には思わなかった。いつも通り、皆でわいわいしながら食べるだろうと思っ ていたのに。 「(ぼりぼりぼり)まぁ、食えよ」 「…ッス(ぼりぼり)」 二人が座っている間にジャガリコを置く、これで二人ともから取りやすくなった。手と口は動かしながら頭ではいままでの サエとの想い出が走馬灯のように流れていく……… <<<<回想<<<< 想い出その1.この砂浜でのアサリ取り。 アサリ採ってるだけなのに輝いて見えた…!!(そういえばあの時ダビデはいつものようにアサリを漁る。とか、くだら んダジャレを言ってバネに蹴られて頭から海の中に突っ込んだ) 想い出その2.テニスの試合。 かっこよかった!光る汗がさわやかだった…!!(見れたのは途中からだったけど、 ダビデが髪をまとめたいのにゴムを忘れてきたって騒いで近所のコンビニを探しに二人で彷徨ったから) 想い出その3.聖バレンタイン。 バレンタインの時は学校中の女の子から貰ったんじゃないの?!ってくらいのチョコ を貰ってた。(テニス部の皆にって事で用意した義理チョコしか渡せなかった、本当は本命用に別に高めのチョコを用意 してあったのに、結局私とダビデのお腹の中に消えていった。) ……サエとの想い出に浸りたいのに、なんだかさっきからダビデの濃い顔ばかりがちらつく。 >>>>回想終了>>>> 「なんか、さっきからサエとの想い出に浸りたいのに。あんたの顔ばっか出てくる」 「俺もさんの顔ばっか出てくる」 「こんな濃い顔何回も見たくないのに!」 「ひどっ!!」 ショックを受けたのか、下を向いて砂浜にのの字のようなものを書き始めた。でかい体してるくせにひざを抱えて小さく なってる姿に少し、ほんの少しかわいいと思ってしまった。じゃがりこはまだ、3分の一ほど残っている。 ひざの間に顔をうずめてさっきからダビデはぴくりともしない。もしかして泣いているのかもしれない、 いくらなんでもさっき言ったので泣いてるんではないよな。となると、原因は考えるまでもなく失恋だろう。私はあの二 人が好き合っている事を知っていたのでいずれこうなるかもしれないと思って心の準備が出来ていたから涙も出ずに、 ぼりぼりじゃがりこを食べてたけど、ダビデは泣きそうになりながらじゃがりこを食べていたのかもしれない…! ……励ましてあげよう。 「ダビデはかっこいいよ」 うちで飼っている犬にしてあげるように頭をなでなでしてあげる。 「…さっき濃い顔って言った。」 「…たしかに言ったけど、ただ濃いだけじゃなくてかっこいい濃いって意味だよ!」 「…ほんとに?」 「…ほんとに!」 「……」 「……」 「さんもかわいいよ」 「うぇぇ?!…あんがと」 「……」 「……」 「…バカだあの二人、こんなにかっこいい俺とかわいいさんを選ばないなんて。」 「そうだそうだ!…てかあんた泣いてなかったの?」 さっきまでひざの間に顔をうずめてべそをかいてたと思ったのに…。握りこぶしを作ってまさにキョトンという表現がピッタ リな表情でこっちを見ている。なんだこいつ… 「いつ俺が泣いたの?」 「…おっまえ!泣いてるのかと思って優しくしてやったのに!」 「泣いてないと優しくしてくれないの?」 なんで上目遣いなの!?そんな子犬のような目で見るな!(ずいぶんでかい子犬だ)優しくしてくれないの ?って甘えんぼさんかお前は!一瞬で頭に色々と言葉が浮かんだけど、無視して合っていた目線をスッと逸らす。なんだか 顔が暑いような気がするが…これは気のせいだ、うん。 「そういえば私サエに言われたんだけど」 「え、無視?」 「(聞こえないふり)恋と憧れは違うんだよ。って」 「……ふーん」 「コルァ!テメーらさっさと部活に来い!」 「うわぁ!バネ!」 「バネさん!」 「もう!普通に登場してよ!何でそんな物陰から出てくんの!びっくりしたじゃん!」 「寿命が縮んだ」 「あぁ?お前らがさっさと来ねえで、こんなとこでぼーっとしてるからだろ!」 バネは、早くしろ!と言いながらダビデの頭をおもいっきり叩いた、その瞬間にパンッとものすごく痛そうな音があたりに 響いた。なんて野蛮なんだ。と思ったが口には出さない。叩きはしないかもしれなが、何かはされそうなので。 「そういや、剣太郎がドリンクない!って騒いでたぞ」 「あぁ〜分かった」 急いでカバンを肩にかける。まだ残っていたじゃがりこはバネに渡した。そうとう痛かったのかまだ頭を抱えたまま動かない (動けない?)ダビデの頭を撫でてあげる。それでもまだ動く様子がないので、先に行くことにした。 不思議とさっきまでのブルーな気持ちは無くなって足取りも軽い。 「おい、ダビデ顔真っ赤だぞ」 「バネさん…俺、恋と憧れの違い分かったかも…」 「はぁっ?!やっと分かったのかよ」 二人とも憧れを恋と間違えてて、本当に好きなのはお互いだったって言いたかったんだけど…伝わってないよね…。 (20080619) |