皆私のこと馬鹿だ馬鹿だって言うけどまぁそれを否定できるほど頭がいいわけじゃないけど馬鹿は馬鹿でも ただの馬鹿じゃなくて頭のいい馬鹿なんだよ私は!だってだって伊作先輩の気持ちの行方だって分かっちゃったしその 伊作先輩の気持ちが成就する事だって分かっちゃたんだから!ただの馬鹿には分からないと思うんだ!







そこまで一息に喋ったかと思うとは口を閉ざして俯いた。まるで僕からの視線を避けるように、けれど見 えてしまった。彼女の目に今にも溢れそうなほど涙が溜まっているのに。
それに開きかけていた口を閉ざす、そうだねは馬鹿だ。という言葉は吐き出されることはなく僕の口の中に溶けていった 。泣いているに追い討ちを掛けるような言葉は掛けたくなかった、だからと言って変わりに気の利いた言葉も出てこない のだけれど。
こうやって泣く事は目に見えて分かっていたのに、は二人の懸け橋になったのだ。余計な事をしなければもしかしたら 今こうして頬を濡らす事にはならなかったかもしれないのに。そう考えるとやっぱりは馬鹿だと思った。
(それを知っているから皆に馬鹿だと言ったのだろう。)
小さく聞こえる嗚咽とぽたぽたと畳にシミを作る涙に気づき胸がざわついた。細い肩は不安げに揺れている。 と僕の間の距離を詰めるために手を使いながら膝だけで前へと進む。




あぁ、本当に君は馬鹿だ。




けれど僕はそれよりもひどい卑怯者だ。
が弱りきっている所につけ込んで、今まさに彼女を抱きしめようと手を伸ばしているのだから






馬鹿な君と卑怯な僕



(20081214)