※ らんま1/2のパロ...? パロというか、主人公が水を被ると女になっちゃうふざけた体質です。





「留三郎ー」
「おぅ」

長期休暇が終わる二日前、忍術学園へと向かう道で自分に向けて掛けられた声に振り返るとが手を振っていた。 が追いつくのを待つために足を止めるも、は俺を待たせてはいけないなんて気遣いを少しも見せずに、ゆっくり と歩いてくる。

「久しぶりだな」

漸く隣まで歩いてきたに話しかけると頷く。

「こんなに大きくなりやがって」

それから俺の頭に手を伸ばしてくる。お前は親戚のおっさんか。
俺とほぼ同じ所にある視線は俺の頭に注がれている。嬉しそうな顔をしていたかと思うとその表情を変えた。にやり と吊り上った口角に嫌な予感がすると、ぐしゃぐしゃと頭をかき混ぜられる。

「やめ、おい!」
「わはははは」

声を上げて笑うを睨むと、からかうように「こえーなー」なんてにこにこしながら口先だけで言う。
絶対に髪がぐしゃぐしゃになっている。はぁ、と溜息を吐くとがますますにやにやと笑った。こいつ...! キッと 睨みつけるも、六年間一緒に居たはまったくと言っていいほどに怖がらないし、反省もしない。
畜生と思いながらやり返しのために手を伸ばすもはそれを予期して、ひらりと俺の手から逃げた。あきらめて髪を 結いなおす事にする。歩きながら髪紐を解き、髪を纏める。

「どうだった? 休みは」

隣を歩くが俺の方を見ながら話しかけに来た。休みの間の事を考えつつ、手は髪を纏めるために動かす。 どうだったと聞かれてもいつも通りだったとしか言いようがない

「いつも通りだ。は?」
「聞いてくれ! それが大変な事があってよぉ!」

待ってましたとばかりにが食いついてくる。そうか、自分の休みがどうだったか聞いて欲しかったんだな。 自分も聞いて欲しくて俺に話を振ったと言うわけだ。
の言う大変な事なんてどうせ大した事でもないんだろう。と 勝手に想像した俺は「へー」と生返事を返した。すると、がムッとした様子で「本当に大変な事だぞ、聞いたら 留三郎は驚きすぎて腰を抜かす事にならぁ!」と、胸を張っていった。それに「ほー」とまた生返事を返そうとした 時だ。後ろから声が聞こえた。

「おーい!」

と一緒になって振り向くと伊作が手を振ってこちらに走ってきているところだった。俺は髪を纏めているので手を 振り返せないのでだけが手を振っている。髪紐で纏めた髪を結っている間に伊作が追いついた。

「二人とも久しぶり」
「よっ」
「おぅ」

久しぶりに三人揃ったな、と思いつつ纏め損ねた髪を結った中にどうにか突っ込もうとする。やっぱり、歩きながら 結うのには限界があった。学園に戻ったら結い直すか。

「二人でなんの話してたの?」

伊作の言葉で、そういえば話の途中だったと思い出した。そして、それはも同じだったらしい。大変な事とか言い ながらも忘れるくらいなのだからやっぱり大したことではなかったらしい。

「そうだ。伊作にも話そうと思ってたんだ。 実は大変な事があったんだよ...!」

ごくり、真面目な顔をして話すに、隣で伊作が喉を鳴らしたのが聞こえた。...どうせ大したことじゃないのに。 一人、馬鹿らしいと考えている俺の考えを見透かした様子でがまたしても文句ありげに片方の眉を吊り上げた。 その時だ、今まで日が差していて快晴だった空にどこから現れたのか、鉛色の雲が流れ込んできた。それはみるみる 内に空を覆い、ゴロゴロ...と今にも振り出しそうな音を出している。俺たちは視線を合わせ頷き、走り出した。 学園まではまだ少し距離がある。どうにかそれまで降らずにいてくれ...!

「うわ、降って来た」

伊作の声が聞こえたのと同時ぐらいに俺の鼻の上にぽつりと水滴が落ちた。本当に降ってきやがった。

「先に木があったろ、あそこまで走ろう」

後ろを走る伊作とに向けて声を掛けてから先程よりも足に力を入れて走った。
雨はぽつぽつ降っていたものから、次第に勢いを増して体を叩きつけてくる。地面はぬかるみ、先が見え難い。


目的の木の下に駆け込むと、大きなその木の葉のお陰で体を叩きつけいた雨が止んだ。びちゃびちゃに濡れた袖を 絞りつつ、視線をこちらに向かって走ってくる伊作とに向ける。そこで、おかしいと気付く。いつもであれば伊作 よりも足が速いはずのが伊作の随分と後ろを走っている。

「うわー、もうびちょびちょだよ...」

木の下に滑り込んできた伊作が手で水滴を払っている。はまだ来ない。
「あれ? 、遅いね」
「あぁ」
伊作も異変に気付いたらしい。雨が視界を邪魔する中、目を凝らしてを見つめる。
出来上がったばかりの水溜りを跳ね上げながらが目の前までやってきて、俺は首をかしげた。
...縮んでいるような気がするのは気のせい...か?

「急に降り出しやがってー!」

...悪態をつく声が高い気がするのは気のせいか?

「びちょびちょじゃねぇか!」

ぶるぶると、まるで犬のように頭を振って水滴を払うに叱る事も出来ず、俺は小さくなったような気がするを 見つめた。俺と同じぐらいの身長だったはずのの旋毛が今はしっかりと見える。伊作もの姿に違和感を覚えたようだ 。訳が分からないというようにを見ている。二人分の視線を受けているはずのは気にした様子もなく袖を絞って 水を地面に落としている。そこでがやっと俯いていた顔を上げた。
...なんだが、じゃない。
の頭の天辺から爪先までまじまじと見て、俺は目を見張った。驚きのあまり声が出なかった。隣の伊作も同じだろう 、驚きすぎて声が出ない。すると、そんな様子の俺を見てがにやりと笑った。そして、得意げに鼻を鳴らす。

「ほらみろ、大変な事だつったろ?」

腰に手を当て、ふんぞり返ったの姿はどこからどう見ても女になっていた。