同じ年頃の子供達がうじゃうじゃといる環境に俺の胸は弾んだ。もうこの時には頭の中から「自分の身は自分で守る」 という名目で入学したことは抜け落ちていた。それよりも何よりも友達が出来るかもしれないということで 頭がいっぱいだった。組み分け試験の時とかも始終そわそわして落ち着かなくて、偶然目が会った子に笑いかけたり した。途端、その子が目を真ん丸にして驚いた表情をしたと思ったらぷいっと顔を背けられたりしたが、どんまいどんまい! こんな日もあるよ!って期待に胸を膨らませてた俺は自分で自分を励ました。
村では友達が一人もいなかった俺だが、ここでならきっと友達が出来てハッピーに学園生活をエンジョイ出来る んじゃないの?! よぉーし、目標は大きく友達百人だ〜!

―――なーんて思っていた頃がわたしにもありました。

残念なことに頭がよくなかった...あ、違うわ...頭“も”よくなかっただわ...ははは。室町調べでは俺ってば不気味な 顔してたんだった。なので、つまり残念なことに頭“も”よくなかった俺は、は組に籍を置く事になった。
近所の子供みたいに逃げられたらどうしよう! と内心びくびくしていたが、は組の奴らは俺の想像とは違う奴らだった。
はきれいな顔してるなぁー!」
という奴ばっかりで、どうやら変態と同じ美的感覚をもった奴ばっかりだったのだ。(それはそれでこいつらの将来的に心配だけど...)なので、他の子たちみたいに 不気味がられるということはなかった。神様ありがとう! 最初は俺から距離を取って遠巻きにしていた奴らも月日が経つごとに普通に 会話できるようになった。初の友達に感動し、喜びに震える俺だったが、他の組の子たちとは友達になれずに五年の 月日が経ってしまった。そして五年経って改めて思うのだ。こんなにたくさんの子供がいるのに俺の友達って片手で 数えれるほど! 忍者を目指してない奴は途中で辞めていったし、授業についていけないや、お金がないという理由で辞めていった奴もいるが、そいつら とは今でも友達だ。友達だけど、学園にはいないので換算しないとすると......ほら! 片手の指で数えれちゃう! 最初は友達が出来ただけで嬉しかったというのに五年の間に俺は随分と欲張りになってしまったらしい。

「はぁ...人間とはなんて貪欲な生き物なんだ。」
「なーに、詩人みたいなこと言ってんだよ!(バシッ!)」
「いたっ!!」
「今日もきれいなお顔だね〜」
「やめひょおお!ほっへたふへんは!」
「ほっぺたびろーん!」
「ぎゃはははは!! 俺も! 俺もしたい!」
「ぶはっ! やばい! の顔やばい!!」

けど、最近少しこれが友達なのか疑っちゃう時がある。
「もしかしていじめってやつじゃないですか?」なんて疑問を担任にぶつけてみるも、担任はそのことについては うんともすんとも言わずに「お前、この前ちゃんと勉強したのか? テストの点数見てみろ...これ、一点だぞ? 一点?!」 逆に説教をされる始末。
こいつらに聞いても「愛情」とにやつく顔で返ってくるのは分かっているので尋ねることは出来ない。担任に無視されたら俺って ほら、友達居ないから...誰にも相談できないじゃん?
...あぁ、孤独。
百人とまでも言わないからせめて両手いっぱいの数の友達が欲しい。この際、年は気にしないから。下でも上でも...。 いや、上は俺が気にしなくても相手が気にするか。じゃあ、後輩でもいい!
そのための第一歩として俺は委員会に所属すべきだと思うんだ。一年の最初に委員会に所属した事もあったが、 なんか輪を乱しちゃったらしくて俺だけ特別に委員会免除になった。それってどうよ? 俺ってば社会の歯車を円滑に 回す事も出来ないなんて...。
確かに委員会の時になんか空気が違うな、って思ってたけどさ。委員会とか友達作るチャンスなわけなのに...せっかく のきっかけなのに...俺、アイドルになりたかったわりにはシャイシャイボーイだから自分から話しかけにいったりとか すっごい苦手。他にチャンスは食堂で「あ、そこの醤油取って」とかさりげなく言って、間違って手を触ってどきっ... 友達になっちゃお! みたいなのもあるんだけど、俺らが食堂行く時間帯って狙ったかのように誰もいないし。時たま 居る時もあるけど、醤油取ってって雰囲気にならないし。
なにこれ...こんなに人がいるのにまるで狙い澄ましたかの ように接点がない...。

「なに? またの友達が欲しい病が発症しちゃったの?」
「病気みたいに言うなっ!!」
、落ち着きなよ〜」

だって病気って...病気って......しょうがないじゃん! 友達欲しいんだよ! 彼女だって欲しいけど! ふんっ!!  こんなに人がいっぱいいる環境なのに俺くらいだよ友達に知り合いを合わせても片手で足りるのって...!
五年経っても好転しない状況に俺だって焦ったりしちゃうわけ。

「...背中に“友達になってください”って書いた紙張っといたら友達できるかな...?」
「全力でやめろ」
「ちぇっ」