一話目 二話目 三話目 一話から順に読んでくださいー! あの衝撃を受けた(と、一言では片付けられない衝撃。例えばサンタさんは居ないと知ったあの日のような衝撃だった...) (言っておくけどそれって地球は丸いって初めて知った人が受けたのと同じくらいの衝撃。...多分)次の日、案の定と言うか私はカリーナやネイサンに尋問された。 あの日何があったのか事細かに聞きだそうとする二人に私はノーコメントを貫いた。 高飛車な女優気取りのようだと批判されたけどそんなことは知らない。私は自分の意思を貫いて口を硬く閉ざした。 そして同時に普段パパラッチたちに追い回され、記者に踏み込んだ質問をされたときの女優やアーティストの気持ちを知った...。 彼女達にだってプライベートがあって話したくない時だってあるはず!!大丈夫...私はわかってるから安心して。って今すぐ伝えたい気持ちだ。 正直一人で抱えるには大きすぎる出来事だったので話したかったのだけどバーナビーさんの気持ちを考えると言えなかった。 「真剣に聞いてください」と言ったバーナビーさんの表情もまた真剣だった。 それを話すなんてことは到底出来ない。 だけど、そんな私の心情を知ってか知らずか...何故だか当の本人であるバーナビーさんが話してしまった。 いつものようにトレーニングルームで各々身体を鍛えているとき...というかそのときは部屋に入った時点で何やら可笑しな雰囲気だったので、 ネイサンに聞いてみるとあっさり「ハンサムから聞いたわよぉ」なんて言われた。 妙な訳知り顔というおまけまでついていて、私は間の抜けた顔をすることしか出来なかった。 「...え?」 「あ、すいません...言っちゃいけませんでしたか?」 まさかの名前を出されて固まっていると、背後に居たらしいバーナビーさんの声が聞こえた。 振り返ればこちらを伺うような視線を向けられている。 「え? あ、いえ、バーナビーさんがいいのなら...」 「その、皆さんにも協力していただいたので言わないわけには...」 「協力?」 聞き捨てなら無い言葉に気まずさも忘れて顔を上げれば、しまったと言いたげな表情を浮かべたバーナビーさんの顔がじわじわと赤くなっていく。 「いえ、その...忘れてください」 本当なら追求したいところだけどどことなく漂う桃色の空気に加え、その他からの生暖かい視線を受けた私は閉口することにした。 バーナビーさんの言葉の通り忘れた方がよさそうだと何となく空気から察した。何だかむずむずするような気がして、靴の中で意味もなく指を動かしてみる。 バーナビーさんが私を好きだということを皆が知っているという事実は、何だか居心地の悪さを覚える。 加えて、バーナビーさんとも今まで通りに接するということも出来なくなってしまった。どうしたって意識してしまうのだ。 それなのにバーナビーさんは今までどおりに接してくる。いや、今までよりも気のせいでなければ積極的に関わりを持ってこようとしているような気がする。 例えば家への帰り道を一緒に歩く回数が増えたし、休日の予定を尋ねられることも増えた。 それらの様子を周りが妙に暖かい目で見てくるのだ。あの虎徹さんでさえも私とバーナビーさんが二人で話しているところに出くわすと「わりぃわりぃ」なんてことを言いながら去っていくのだ。 いや、何も悪くないですけど! そんな感じが続いているので、私も考えざるを得ない。 バーナビーさんはああ言ってくれたけどどっちつかず過ぎる返事なんて求めているわけが無い。 だって私がしてるのってつまり、飼い殺しって奴だし。馬が目の前に人参をぶら下げられて走らされているようなもん。 それって下手したら動物愛護団体に訴えられる可能性もある...! いや、まぁバーナビーさんは馬じゃないし、私も人参じゃないけどものの例えで! そんな状態って気まずい、以外のなんでもない。 もてもてなヒーローに告白されて???? で????私はどっちつかずな返事をしてバーナビーさんを待たせている。 何様????????? こんなことバーナビーさんのファンにもし知られるようなことがあれば...今すぐシュテルンビルドをから夜逃げしないといけない。 誰にも行き先を告げずにどっかの海辺町とかに。 私がヒーローしてたってことを誰も知らないようなところ...軽く海を渡らないといけない。 とにかくこんな状態は耐えられなくなってしまい、どうしてもバーナビーさんと対峙するとぎこちなくなってしまった。 自分でも普通でいようとしているのにそうもいかない。それはもちろんバーナビーさんにもわかってしまったらしい。 ぎこちない返事に合わない視線...そこから気まずいと感じていることを察して、言われたのが 「いつまでも待つので気にしないでください。今まで通りに接して欲しいです」 「今までどおりが無理と言うのなら、一時的にあのときのことは忘れてくださってかまいません」 バーナビーさんはいつまでも待つから気にしないって...! 素敵、......何だろうけど困る!! 私が気持ちに応えられなかった場合はバーナビーさんの時間を無駄に使わせてしまうことになるし!! ということで、私なりに焦っていたのだけど、あれからもう1年が経とうとしている。 そもそもバーナビーさんが私のことを好きだということについてもいまいち納得できないところがある。 好きだといわれたのだから私のことを好きなのだろうとは思うのだけれど、バーナビーさんはもてもてでその気になれば彼女なんて 10人くらい作れるくらいの人なのだ。そんな人が私のことを好きだというのがいまいちわからない。 つまり、バーナビーさんに選ばれるほどの魅力が私にはあるとは思えないのだ。 「それはつまり僕の気持ちが信じられないということですか」 馬鹿正直に「そうです」なんて答えられるわけがないので私は曖昧に言葉を濁した。 信じられないわけじゃない。とは答えることは出来ない。つまりそういうことなんだろう。 「......わかりました」 諦めたような表情を浮かべたバーナビーさんがその場で踵を返した。咄嗟に引きとめようと口を開いたところで、何を言うべきなのかわからずに結局口を閉じた。 バーナビーさんの横顔はすごく悲しそうだった。 どことなく気まずい雰囲気の私とバーナビーさんを見て、みんなも察してくれたらしい。 以前までの生暖かい視線はなくなり、変わりに心配そうな目で見られることが増えた。 それはそれで気まずいのだけどそう言うことも出来ない。 そんな日が数日続いたところで、いつものようにトレーニングルームに行けばみんなが何やら円になり顔を突き合わせてベンチに集合している。 一体何をやっているんだろう、と思いこっそり近づいて一緒になって覗きこむ。 「もう! ハンサムったらこんな迂闊なことして」 「だよなー庇えねぇぞ...」 ネイサンの言葉にどきっとしながらもバーナビーさんに関する何かであることは想像できる。だけど、肝心の何かがわからない。 覗き込もうとしても大きな体が壁になって見えない。その場でジャンプしてみるも見えるわけはなかった。 バーナビーさんに関することなら「私にも見せて」とも言うことができない。...何となく。 「...えっ、?!」 こちらを一度見てから再度見て驚きの声を上げたカリーナに盗み見していたようなやましさを覚えて片手を上げて「やぁ」と誤魔化すように挨拶をした。 そうすると今までベンチに置かれていた何かに集中していた視線が弾かれたようにこちらに向けられた。 「おっ、おぅっ、来てたのかー気づかなかったぜー! なっ折紙!」 「えっ?!...あ、あ、はい...全然気づきませんでした!」 不自然な動きで虎徹さんとイワンがまるで私からベンチをブロックするように前に出てきた。 そんなにあからさまに背後の何かを隠そうとされれば私の興味は俄然そちらに向けられることなる。 わたわたと見るからに何かを隠そうとしているキースさんが手にしているそれを注視する。......雑誌? 二人のブロックをフェイントで抜けてキースさんに向けて声をかけながら右手を上げる。イメージするのはバスケの選手だ...! 「こっち!! キースさんパス!」 「あぁ!!」 「「「「ああー!!!!」」」 呆気ないほど簡単にパスに応じてくれたキースさんが投げてくれたのはやはり雑誌だった。 「しまったー!!!!!! 私としたことが!!!!!!」 頭を抱えていつも通り大きなリアクションで「ショック!!!」と体で表現しているキースさんを横目に私は雑誌の表紙にある見出しに目を通した。 今人気の俳優がこちらを見つめている横にはいくつもの文字が並んでいる。その中からバーナビーさんの文字を見つけた。 そうして文字を目で追えば、一瞬息が止まった。 「別に面白いもんはなにもないから、なっ?」 虎徹さんに雑誌を取り上げられたときには、もうすでにしっかり頭にその文字がこびりついてしまってからだった。 いつまでも待つとも言っていたのに案外バーナビーさんの心変わりは早かったらしい。 あの後何も知らないバーナビーさんがトレーニングルームにやって来たときには、雑誌はいつの間にやら誰かの手によって陰も形もなくなっていた。(というのは言い過ぎで、多分虎徹さんの服の中だ。だってお腹が平らだった。) なので私はその見出しの真相を知るべく、その日の帰りに本屋さんでその雑誌を立ち読みしてみたのだ。 そこには2面も使ってバーナビーさんと誰だかわからないけど女性がぴったりと必要以上に密着している写真だった。 煽り文句としてでかでかと「人気ヒーローの熱愛発覚!!」と書かれている。 ”みんなのヒーローであるバーナビーはプライベートでは彼女だけのバーナビー” そこまで読んで私は雑誌を閉じた。 そうか、バーナビーさんは彼女だけのバーナビーさんになっちゃったのか。 目はモザイクがかかっててよくわからないけどなんか美人な雰囲気が漂っている。お似合いっていうやつだと思う。ヒューヒュー! ...無理矢理テンションを上げてみようとしたけど、その試みは失敗に終わった。 なんだかお腹の中に冷たい氷をたくさん詰め込まれたかのような心地で、私はこみ上げてくる何かを飲み込むために口を引き結んで帰った。 (20171104) おめっとー!!!すでに遅れてるのにまだ続きます...! |